ロマンチックな非現実感にきゅんとする

 

 わたしがキュンとするもの。
拡張した耳、シャープな下顎骨、チラリと見える銀歯、浮き出た背骨、綺麗な形の爪。

 

 きゅんとした瞬間って、なぜだか分からないけどすごく記憶に残る。そこだけが切り取られたみたいに、時間が経っても鮮明に色鮮やかに覚えてる。


 性格的なことで、滅多なことじゃドキドキしたりきゅんとしたりしない、っていうのも関係してるのかもしれないけど、きゅんとさせてくれた相手のことって、いくら時間が経ってても、ふとした瞬間に思い出したりする。他のことは思い出さない。てか思い出せない。忘れちゃうから。


 わたしはどうやら、「意外性×ロマンチックさ」に弱いみたいです。どうしてもグッときちゃう…


記憶に残ってるきゅんエピソードを2つ紹介するので聞いてください!

 ひとつめは遊んでたら、たまたまそこにピアノがあって、その流れで、「俺 ピアノ弾けないんだけど一曲だけ弾ける曲があるんだ」と言って笑った男の子が、指づかいのぐちゃぐちゃな指でたどたどしく弾いてくれたのが、ヴェートーベンの「月光」だったとき。

 え?!「猫踏んじゃった」じゃないの?!! 一曲弾けるっていう人はだいたいあれじゃん?! まさかの月光…?てかベートーベン…?嘘……、という衝撃があった。あれはかなりきゅんとしたね。

 

 もうひとつは、ある時期よく電話していた人がいたんだけど。その彼は、ぜんぜん本を読まないのに、なぜか唯一シェイクスピアだけは大好きで、シェイクスピアの本はほとんど持ってた。

通話ごしに、自分の好きな台詞を暗唱して聴かせてくれたりして。わたしはたまに訪れるその瞬間がとても気に入っていた。

 

 ぜんぜん本読まないのに唯一好きなのがシェイクスピアってなに?センス良すぎじゃん? わたしは「ヴェニスの商人」が好きだな、 もちろん「マクベス」とかも最高だよね… きみとそんな話ができるなんて全く期待してなかったからかなり感動だヨ、

 

 きゅんとしたから好きになるとか、付き合うとかそういうのは別にないんだけど、すごいキラキラした思い出が1つできる、あの感覚がとても好きだ。海辺で光る石や美しい形の貝殻を拾ったみたいなさ。 

相手の顔とか名前とか性格とかそういうのは、(忘れっぽいから)あんまり思い出せないし記憶からほぼ消えちゃうんだけど、その、きらめいた“瞬間”だけは色褪せないまま、わたしの中で輝き続けるんだよね。


もっときゅんとしたいよ、させてくれ! 心の中を色鮮やかなきらきらで埋め尽くしたい。